牛ヒレ肉は、骨盤の内側付近に位置する「大腰筋」を指した部位です。
牛肉の部位の中でも非常に柔らかい肉質と脂肪分が少ないことから、ダイエットやアスリートからの人気も高い部位と言えます。
本記事では、牛ヒレ肉の魅力や美味しい焼き方、レシピについて詳しく紹介いたします。
ヒレ肉とロース肉の違い
ヒレ肉とロース肉の主な違いは、固さと肉質の違いです。
- ロース肉・・・筋が少ない赤身肉、柔らかく濃厚な味わい
- ヒレ肉・・・脂身が少なくロース肉に比べて噛みごたえがある
また、ロース肉には肩ロースとリブロースの2種類があり、どちらも程よい脂身と食感が特徴です。
一方で、ヒレ肉はロース肉に比べてとれる量が少なく、「肉の女王」とも呼ばれています。
牛の部位の中でもあまり動かさない部位であるため、脂身が少なく柔らかい食感と言えるでしょう。
焼肉のヒレについて
ヒレ肉の特徴は、きめ細かく柔らかい肉質です。
牛ヒレの部位や特徴、栄養素について詳しくみていきましょう。
部位
牛ヒレはサーロインより下の部分にあり、内臓のすぐ上に位置します。
牛肉の部位の中でも運動量が少ないため、脂身が少なく、きめ細かい肉質が特徴です。
牛ヒレは、牛肉の部位の中でも希少部位に当たります。
そして、貴重な牛ヒレの中心部にあるのが「シャトーブリアン」です。
旨味や肉本来の風味が強いことから、ステーキや焼肉などで肉本来の香りを楽しみながら食べるのがおすすめと言えるでしょう。
ヒレ肉の別の呼び方
ヒレ肉の呼び方には、「ヒレ」「フィレ」「ヘレ」などの呼び方が存在します。
「ヒレ」は、フランスの「フィレ(filet)」が語源です。
日本人が通訳していくうちに呼び方が変わっていき、関東では「ヒレ」、関西では「ヘレ」というように、地域によって呼び方はそれぞれ異なる傾向にあります。
味や特徴
牛ヒレ肉は、柔らかい肉質と爽やかな味わいが特徴のお肉です。
クセがなく食べやすいため、幅広い年代の人に好まれているお肉でもあります。
脂身の部分もほとんど感じられないため、あっさりとした風味と肉本来の味を楽しむことができるでしょう。
牛1頭からどれくらいとれるか
牛肉の部位は大きく分けて13種類、細かい部分を入れると40種類以上にのぼります。
ヒレ肉は棒状のブロック肉で、背骨の真ん中部分、片側に1本ずつしかありません。
そのため、牛1頭に対して2本しか存在せず、ヒレ肉が占める割合は全体の3%ほどと言われています。
牛ヒレはサーロインと並ぶほど希少価値の高い部位なのです。
カロリーや栄養素
牛ヒレ肉のカロリーや栄養素は、和牛肉か輸入肉かによって異なります。
それぞれの牛ヒレ肉100gあたりのカロリーや栄養素は下記の通りです。
- 輸入肉
- エネルギー 132キロカロリー
- タンパク質 20.5グラム
- 脂質 4.8グラム
- 鉄 2.8グラム
- ビタミンB1 0.10ミリグラム
- ビタミンB2 0.25ミリグラム
- ナイアシン 4.7ミリグラム
- 和牛肉
- エネルギー 223キロカロリー
- タンパク質 19.1グラム
- 脂質 15.0グラム
- 鉄 2.5ミリグラム
- ビタミンB1 0.09ミリグラム
- ビタミンB2 0.24ミリグラム
- ナイアシン 4.3ミリグラム
牛ヒレ肉はタンパク質を多く含んでいます。
タンパク質には代謝を下げ、筋肉量を増やす役割があるため、ダイエットにも効果的と言われています。
しかし、ヒレ肉は食べすぎてしまうと生活習慣病や糖尿病などのリスクが高まってしまうため、適正量をしっかり守って摂取すると良いでしょう。
焼肉のヒレ、おいしい焼き方
牛ヒレ肉を美味しく味わうためには、いくつかのコツを抑えておく必要があります。
適切な調理方法で、ヒレ肉をより美味しく焼く方法について解説いたします。
常温に戻し、焼く直前に塩を振る
冷凍、冷蔵保存していたヒレ肉は、必ず常温に戻してから調理しましょう。
調理を始める30分ほど前に取り出すのが理想です。
冷えた状態で焼いてしまうと、焼きムラや、焼き加減の調整が難しくなることがあるため注意が必要です。
また、ヒレ肉に下味をつける際は塩コショウを振るタイミングが重要です。
塩コショウをつけた状態で長時間放置してしまうと、肉の水分や旨味成分が流れ出し、焼いた後の食感にパサつきが出てしまいます。
必ず焼く直前に塩コショウを振り、肉全体にまんべんなく振りかけます。
お肉から30センチほどの高さからかけると、均一に振ることができるでしょう。
焼きすぎない
フライパンを十分に熱したら、焼き始めは強火がおすすめです。
- レア・・・30秒
- ミディアムレア・・・60秒
- ミディアム・・・120秒
ウェルダンの場合は、両面に肉汁が出てきたら弱火にし、再びもう片面を同じ時間焼きましょう。
レアを選んだ場合にも、まずは片面を高温で焼き、焦げ目をつけることで肉の旨みを閉じ込めることができるのです。
片面を好みのタイミングで焼いたら、弱火にし、ヒレ肉を返します。
裏側も再び同じ時間で焼きますが、ヒレ肉を返すのは1度だけです。
むやみに焼きすぎてしまうと肉の旨味が逃げ出してしまうため、焼きすぎや返しすぎには注意しましょう。
余熱で火を通す
両面を焼き終えたら火から下ろし、余熱を利用して内部に熱を通します。
ヒレ肉には水分が多く含まれており、加熱しすぎてしまうと旨み成分を含んだ水分が流れやすくなってしまうのです。
余熱を利用することで、それぞれの焼き加減に適した温度に仕上がります。
あらかじめお湯で温めておいたお皿にヒレ肉を盛り付けるのもおすすめです。
完成したヒレ肉は、岩塩や黒コショウなどのシンプルな味付けで食べることで、肉本来の味と香りを楽しむことができるでしょう。
焼肉のヒレ、おいしいレシピをご紹介
そのまま焼いても美味しいヒレ肉ですが、ヒレ肉の旨みを活かした料理はたくさんあります。
ヒレ肉の美味しいレシピについていくつかご紹介いたします。
牛ヒレ肉の黒胡椒炒め
ヒレ肉の黒コショウとの相性の良さを活かした料理です。
好みの野菜やきのこなどを入れて自分好みにアレンジしても良いでしょう。
<材料>(約4人分)
- 牛ヒレ 300グラム
- アスパラガス 200グラム
- 赤ピーマン 1個
- 生姜の薄切り 2〜3枚
- 長ネギ 3センチ
- 黒コショウ 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1+½
- 片栗粉 大さじ1
- 油 大さじ1
<作り方>
- ヒレ肉の表面に軽く切り込みを入れ、5〜6センチ長さ1センチ程度の棒状に切る。醤油、黒コショウ、片栗粉を揉み込み、油を加えて軽くほぐす。
- アスパラの根元を切り落とし、根元の固い皮をむき、ハカマをとって5〜6センチほどの長さに切る。赤ピーマンはタネを取り除き、縦1センチ程度に切る。
- 生姜と長ネギは荒切りにする。
- 黒コショウを細かく叩き潰し、片栗粉小さじ1/2を倍量の水で溶いておく。
- 中華鍋やフライパンに油大さじ1+1/2を熱してアスパラを炒め、火が通ったら赤ピーマンを加えて炒め、取り出す。
- 中華鍋に油大さじ1+1/2を足して、長ネギと生姜を炒める。香りが出たら牛ヒレ肉を加えて強火でさらに炒める。
- 肉の色が変わったら赤ピーマンとアスパラを戻し、醤油、酒で手早く調理する。
- 水で溶いた片栗粉を加え、仕上げに黒コショウを振りかけて軽く炒めたら完成。
牛ヒレ肉の炒めごはん
柔らかいヒレ肉とりんごの爽やかさの相性抜群な料理です。
自分の好みに合った野菜を入れても良いでしょう。
<材料>(約2人分)
- 牛ヒレ肉 100グラム
- 砂糖 小さじ2
- ナンプラー 小さじ2
- サラダ油 小さじ1
- ご飯(炊きたて) お茶碗2〜3杯
- きゅうり 1/2本
- りんご 1/4個
- ミントの葉 適量
- 生姜 2枚
- カシューナッツ 適量
- プチトマト 6個
<調味料>
- 味噌 大さじ1
- ニンニク(みじん切り) 1/2片
- チリソース 小さじ½
- ナンプラー 大さじ1
<下準備>
- 牛ヒレ肉・・・1センチ角に切る。
- ご飯・・・ボウルに入れ<調味料>を加えてよく混ぜる。
- きゅうり・・・縦縞に皮をむき、斜め薄切りにする。
- りんご・・・皮ごと綺麗に洗い、芯を切り落として薄切りにして塩少々を入れた水に放ち、水気を切る
- 生姜・・・千切りにする
- カシューナッツ・・・フライパンで炒って、香ばしさを出し、荒く刻む
- プチトマト・・・水洗いし、水気をきって半分に切る。
<作り方>
- フライパンにサラダ油を強火で熱し、ヒレ肉を炒める。砂糖、ナンプラーを加えて味付けし、取り出す。
- 1のフライパンに<調味料>を合わせたご飯を入れ、サッと炒める。
- お茶碗に1のヒレ肉を半分入れ、2のご飯の半量を押さえ付けながら入れ、お皿に返す。
- 3の周りにきゅうり、プチトマト、ミントの葉を添え、りんごをご飯の周りに飾り、ご飯の上に生姜、カシューナッツをかけたら完成。
ジンジャーステーキ
とろっとした生姜のタレがご飯によく合うレシピです。
生姜の代わりにニンニクを使用しても良いでしょう。
<材料>(約2人分)
- 牛ヒレ 2枚(200グラム)
- 玉ねぎ 1個(120グラム)
- グリーンアスパラガス 2〜4本
- 塩
- コショウ
- サラダ油
<生姜だれ>
- 生姜(すりおろし) 15グラム
- みりん カップ1/4
- 醤油 大さじ2
- オイスターソース 大さじ1
<作り方>
- 玉ねぎを縦半分に切り、7〜8センチ幅に切る。アスパラガスは根元を切り落とし、下から3センチほどピーラーで皮をむいて食べやすい長さに切る。塩少々を入れたお湯で冷水にとって水気をきる・
- ヒレ肉は両面に塩・コショウをふる。
- フライパンにサラダ油大さじ1/2を中火で熱し、2のヒレ肉を入れる。両面を好みの加減煮焼き、アルミホイルで包んで2〜3分間おく。
- 3のフライパンに1の玉ねぎを入れ、軽くしんなりするまで炒めて取り出す。
- 4のフライパンに<生姜だれ>の材料を混ぜ入れ、中火で混ぜながら軽く煮詰める。
- 器に玉ねぎとアスパラガスを盛り、食べやすい大きさに切った牛肉をのせ、5の<生姜だれ>をかける。
牛ヒレ肉のサラダ仕立て
お肉と野菜が一緒に味わえる、色鮮やかなサラダステーキです。
ベビーリーフだけでなく、ケールなどと組み合わせてもおすすめです。
<材料>(約3〜4人分)
- 牛ヒレ 300グラム
- 塩A
- コショウA
- ガーリックパウダーA
- ニンニク 1片
- 玉ねぎ 1/4個
- ごま油 大さじ1
- 出汁醤油B 大さじ2
- 酢B 大さじ½
- レモン汁B 少々
- ハチミツB 少々
- ブラックペッパーB お好みで
<作り方>
- ニンニク、玉ねぎをみじん切りにする。ヒレ肉にAの調味料を振って下味をつける。
- フライパンにごま油をひき、ニンニクを弱火で炒める。中火にして玉ねぎを加え、しんなりするまでしっかり炒めて容器に取り出す。
- Bの調味料を加えてしっかりと混ぜ込む。
- ヒレ肉をお好みの焼き加減で焼いてスライスする。ベビーリーフと一緒に皿に盛り、3をかけたら完成。
すき焼き風和風牛ヒレカツ
牛ヒレ肉は肉質が柔らかく、食べ応えがあるためヒレカツにも適しています。
ポン酢や大根おろしなどと一緒に和風な味付けにして食べてみてはいかがでしょうか。
<材料>(約2人分)
- 牛ヒレ肉 2枚(140グラム)
- 塩 少々
- コショウ 少々
- 小麦粉 適宜
- 溶き卵 適宜
- パン粉 適宜
- 揚げ油 適宜
- 大根(すりおろし) 60グラム
- 春菊 60グラム
- 生椎茸 2枚
- ゆず・果皮(千切り 少々
- ポン酢醤油 大さじ1
<作り方>
- 牛肉は軽くたたき、両面に塩、コショウをふる。春菊は熱湯で茹で、冷水にとって水を絞り、根元を落として4センチほどの長さに切る。
- 椎茸の軸を切り落として飾り切りにし、熱湯で茹でる。大根おろしは軽く水気をきる。
- 牛肉に小麦粉、溶き卵、パン粉の準に衣をつけ、180度の温度で揚げ、食べやすい大きさに切る。皿に春菊と2を盛り付け、春菊にゆずの皮をのせる。
- カツを盛り付け、ポン酢醤油を添えたら完成。
まとめ
ヒレ肉の特徴は、柔らかくきめ細かい肉質が特徴です。他の部位のお肉と比べても脂肪分が少なく、カロリーが低いのも魅了的です。
しかし、ヒレ肉の魅力を引き立たせるためには適切な下味をつけることや焼き時間に注意する必要があります。
本記事を参考に、牛ヒレ肉の爽やかな味わいを自宅で味わってみてはいかがでしょうか。