イチボはどこの部位のこと?美味しい焼肉の仕方をご紹介

焼肉店に行くと、メニューに「イチボ」と書かれていることがあります。「イチボ」とは1頭の牛からわずかしか取れない希少な部位で、牛肉好きの人やプロの調理人から人気の肉です。

焼き肉店のメニューで見る「イチボ」ってどんなお肉?

牛肉は牛から取れる場所によって分けられていて、それぞれ部位の名前がついています。では、「イチボ」とはどの部分の肉で、どのような特徴があるのでしょうか。

イチボは牛のどの部位?

農林水産省が定めた「食肉小売品質基準」では、牛肉の部位は「ネック」「かた」「かたロース」「リブロース」「サーロイン」「ヒレ」「ばら」「もも」「そともも」「らんぷ」「すね」の11種類です。このうち「らんぷ」は「らんいち」とも呼び、「らんぷ」と「イチボ」にさらに分けられます。

また、「日本食肉格付協会」が規定する部位では、「ネック」「かた」 「かたロース」「かたばら」「ヒレ」「リブロース」「サーロイン」「ともばら」「うちもも」「しんたま」「らんいち」「そともも」「すね」の13種類に分けられています。

「イチボ」とは、牛のお尻に近い部分のもも肉です。もも肉と言うと硬いというイメージがありますが「イチボ」は、運動量が少ないお尻の先端部分のため、もも肉の中では柔らかく、サーロインに似た味わいがあります。

イチボの名前の由来

骨の形がアルファベットの「H」の形に似ていることから、牛のお尻の骨や骨付きの肉を、英語では「aitchbone(エイチボーン)」 と呼びます。このエイチボーンが訛って「イチボ」と呼ばれるようになったと言われています。

イチボの特徴

牛の種類や個体によって多少異なりますが、「イチボ」は1頭から2キロほどしか取れません。そのため焼き肉店や精肉店では希少部位と表示されることがあります。

一言で「イチボ」といっても、部分によって肉質が異なります。牛の部位は「サーロイン」から「ランプ」「イチボ」「そともも」と続いていますが、「イチボ」でもサーロイン側は、肉質は柔らかく霜降りが多く甘味があるので焼肉やステーキで人気です。そともも側は、筋肉質でやや硬めの肉質ですが、赤身と脂身のバランスが良いので、嚙めば嚙むほど肉本体の旨みを感じます。焼肉以外に煮込み料理にも適しています。

焼肉で美味しい良いイチボの見分け方

美味しいイチボの見分け方について解説します。

肉の色をチェック

「イチボ」に限らず牛肉を選ぶ際には、肉の色で判断します。良い牛肉はワインのような鮮やかな赤色をしています。黒ずんでいたり肉の表面が乾いてパサパサしているものは、新鮮な状態の肉ではありません。ただし、牛肉が重なっている部分が、黒くなっているのは問題ありません。切りたての牛肉は黒ずんだ暗い赤色をしています。そこから空気に触れ酸化することで、鮮やかな赤色に変わっていきます。鮮度が良ければ広げて少し空気に触れさせると鮮やかな赤色に変わります。

脂肪の色は、白または乳白色で、赤身と脂身の境目がはっきりしているものが良い牛肉です。脂肪が黄色くなっているものは、鮮度が落ちているので避けましょう。

ドリップが出ていないかチェック

スーパーに並んでいる牛肉で、トレイに赤い液体が溜まっているのを見ることがあります。これはドリップ(血汁)といって、肉のうまみ成分です。そのため、美味しい肉を選ぶ際には、ドリップが出ていないものを選びましょう。

脂肪の入り方をチェック

赤身肉の中に、霜がおりたように白く脂肪が散らばっている状態を「霜降り」といいます。「サシ」も同様の意味で使われていて、赤身の間に入り込んでいる脂肪のことです。専門用語では「脂肪交雑」と呼びます。霜降りやサシが入った牛肉は美味しいと言われていますが、きめ細かく入っているものがより柔らかく美味しい肉です。

イチボは食べ方で選ぼう

前章で紹介した通り、「イチボ」と言ってもサーロイン側とそともも側では肉質が異なります。焼肉やステーキで食べる場合には、霜降りが入ったサーロイン側の肉を選ぶと良いでしょう。一方で、そともも側の肉は、脂肪が少なくやや硬めなのでビーフシチューなど煮込み料理にするのがおすすめです。

イチボは焼肉に向いている?他の部位の違い

牛肉の選び方は、食べ方や牛の種類や産地、部位によって違います。

イチボの産地による違い

牛肉は、国産牛肉か輸入牛肉かによっても肉質が大きく異なります。生鮮食品品質表示基準では、生まれた国に関係なく、国内での飼養期間が海外より長い場合に「国産牛」といいます。このうち「和牛」は、国が認めた4品種だけです。「和牛」については、後ほど説明します。

一方で、「輸入牛肉」は、海外で飼育された牛を現地で食肉加工して、冷凍やチルドの状態で輸入したものです。輸入先は、主に北米産(アメリカ・カナダ)とオセアニア産(オーストラリア・ニュージーランド)です。

北米産の牛肉は、和牛と比べると脂質が約1/3、カロリーが約1/2と低脂質低カロリーでヘルシーな肉質です。しかし、トウモロコシなど良質な飼料で育てられていることから、ジューシーで柔らかく牛肉本来の旨みがあります。

オセアニア産の牛肉は、牧草を食べさせて育てた赤身の多いグラスフェッド(牧草飼育牛肉)と穀物飼料を食べさせたグレインフェッド(穀物肥育牛肉)があります。このうちグレインフェッドは日本への輸出用として開発された商品です。ジューシーで脂肪が程よく入った肉質が特徴です。

国産牛と和牛の違い

先ほど説明した通り「国産牛」は、国内での飼養期間が海外より長い牛を指します。その中で、国が認めた4品種の肉専用種と、その4品種間の交配による交雑種のみが「和牛」と呼ぶことができます。和牛の4品種は、「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」で、流通している和牛の約9割は「黒毛和種」です

国産牛は他に、「乳用種」のホルスタイン種や黒毛和種に乳用種を交配させた「交雑種」、アンガスやヘレフォードなどの外国種の肉が流通しています。

部位による違い

農林水産省が定めた「食肉小売品質基準」による11部位の肉質の違いと特徴は次の通りです。

部位特徴おすすめの料理
ネック(首にある肉)よく動かす部分なので、脂肪が少なく赤身が多く、少し硬めの肉質です。味が濃厚でエキス分が豊富です。煮込み料理・シチュー・スープ、ひき肉
かた(前脚上部の肉)運動量が多い部位なので、脂肪が少なく肉質はややかためです。ゼラチン質やうまみ成分が豊富に含まれています。煮込み料理・シチュー・スープ
かたロース(ロース全体の先端部分の肉)やわらかく、適度に脂肪が分散していて、ロース特有の美味しさを味わえます。すきやき・しゃぶしゃぶ・焼肉
リブロース(ロースの中心部の最も厚い部分の肉)霜降りに脂肪が入りやすく、肉質はきめ細かくて柔らかく風味も優れた良質な肉質の部位です。ステーキ・ローストビーフ・すきやき・しゃぶしゃぶ
サーロイン(背中の部分の肉)運動量が少ないので、筋肉量が少なくやわらかい部位です。「サーロインステーキ」と言われるように、肉牛の最高部位のひとつです。ステーキ・すきやき・しゃぶしゃぶ
ヒレ(サーロインの内側にある肉)最も肉質がきめが細かく最もやわらかい部位で脂肪や筋がほとんどありません。牛1頭からわずかしかとれない希少な部位です。ステーキ・ローストビーフ・カツレツ
ばら(あばら骨周辺の肉)肉質はきめが粗く硬めですが、赤身と脂肪が層になっていて濃厚な風味があります。煮込み料理・シチュー・焼肉・すきやき・牛丼
もも(後脚上部外側の肉)筋肉が集まっている部分なので、赤身で脂肪の少ない部位です。煮込み料理・シチュー・スープ
うちもも(後脚上部内側の肉)もっとも脂肪が少ない部位です。肉質が均一な大きなかたまりで肉が取れます。ステーキ・ローストビーフ・煮込み料理・すきやき
らんぷ(お尻の肉)肉のきめが細かく、やわらかな赤身肉で、赤身の旨みがあります。やわらかい部分はステーキや焼肉、それ以外は煮込み料理に向いています。ステーキ・ローストビーフ・たたき・焼肉・シチュー・スープ
すね(前脚後脚のふくらはぎの肉)運動量が多い部位なので、脂肪が少なく赤身の多い硬めの肉質です。ゼラチン質を多く含み、味が濃厚なのでスープを取るのに向いています。煮込み料理・ポトフ

焼肉で美味しいイチボの食べ方

「イチボ」は、霜降りが良く入って歯ごたえもしっかりとしている肉です。焼肉で味わう際には、レアからミディアム程度で焼き過ぎないようにしましょう。じっくりと弱火で肉の表面を焼いて、中はほんのり赤さが残るぐらいが美味しい焼き加減です。厚切りの場合には、両面を1分づつ2回焼いて、しっかりと火を入れます。

赤身が多く旨みが強いので、味付けはシンプルに塩コショウだけで、イチボの本来の味を楽しみましょう。タレの場合にはしょうゆベースのタレや甘口のタレがおすすめです。

イチボに関するまとめ

本記事では「イチボ」が「どの部位の肉か」や「名前の由来」「肉の特徴」「焼肉の美味しい食べ方」などについて紹介しました。「イチボ」は1頭の牛で約2キログラムと少ししか取れない希少な部位です。霜降りと赤身の旨みのバランスが良いので、肉好きの方やプロの調理人の方から人気の肉です。焼肉店やスーパーで「イチボ」を見かけた際には、ぜひ味わってみてください。

 

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