牛肉の赤身肉とはどこの部位?意外と知らない赤身肉についてご紹介

牛肉の赤身と聞いてすぐに部位までイメージできる人はほとんどいません。知っているようで知らない赤身肉について、徹底的に解説していきます。

赤身肉とは?部位と特徴を紹介

赤身肉と聞いて思い浮かぶのはどんな肉でしょうか?

「脂身の少ないスーパーで売っている安価な肉」というイメージしか持たれていないことが多いですが、もう少し詳しく赤身肉の特徴や部位について紹介していきます。

そもそも赤身肉とはどんな肉?

赤身肉は、「単に見た目が赤い肉の総称」として使われていることが多く、特定の部位を言い表すものではありません。

脂肪分が少ない赤身肉は、素材そのものの味わいを楽しむ種類の肉で、部位によって美味しく食べるための調理方法が変わってくるのが特徴です。

なぜならば、赤身肉の赤い部分は筋繊維であるため、部位によって筋繊維の発達が異なり、調理方法にも違いが出てくるからです。

部位によって違う赤身肉の特徴

赤身肉を大まかに分けると以下のようになります。

①かた(ミスジ、トンビ)

キメが荒く硬めの部位のため、スライスされて、すき焼きやしゃぶしゃぶで使用されます。赤身肉としてはあっさりしているので万能に使えます。

②ヒレ

牛肉の中で最も柔らかく、脂身が少ない赤身肉で、ステーキではサーロインと並ぶほどの人気がある高級部位です。

③モモ(うちもも、そともも、らんいち、しんたま)

赤身肉における定番の部位です。「うちもも」はローストビーフに、「そともも」はスライス肉として好き焼きやしゃぶしゃぶに使われます。

「らんいち」はランプやイチボとも言われ、ステーキや焼肉に、「しんたま」は霜降りもあるため焼肉にも使用されます。

④すね(前スネ、友スネ)

運動量が多く筋が多いのが特徴の部位です。煮込むことで柔らかくなるだけでなく、スジがコラーゲンとなるためシチューなどの煮込み料理によく使われます。

⑤ハラミ(内臓に分類される横隔膜)

サシ(霜降り)が入った柔らかで上質なものもありますが、あっさりとした赤身としても人気があります。

⑥ホホ(内臓に分類されるほっぺた)

運動量の多い部位のため、スジが多く硬いのが特徴です。じっくり煮込んで柔らかくする煮込み料理におすすめです。

赤身肉に限らず、牛肉の部位の分類は、一般的には、「牛部分肉取引規格」によって13分類に分けられます。

公益社団法人 日本食肉格付協会

http://www.jmga.or.jp/standard/beef-partial/

  • ネック
  • かた
  • かたロース
  • かたばら
  • ヒレ
  • リブロース
  • サーロイン
  • ともばら
  • うちもも
  • しんたま
  • らんいち
  • そともも
  • すね

ちなみに、焼肉屋さんで注文する、「ハラミ」は「内蔵」に属し、「カルビ」は「バラ肉」を指し、分類では「かたばら」「ともばら」に分けられ、「ランプ」「いちぼ」は「らんいち」に含まれます。

他にも部位の分け方としては、農林水産省が定めた「食肉小売品質基準」の11分類があり、内蔵系(関西ホルモン・関東モツ)の分類としては、一般社団法人日本畜産副産物協会が「副生物の呼び名」として紹介しています。

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1608/spe2_02.html

http://www.jlba.or.jp/con06_5_usi.html

肉の分類は国内でも地方によって分け方や名称が異なるだけでなく、アメリカ産やオーストラリア産といった国ごとにも規格が異なるため、複雑なのも事実です。

知っていると買い物の際に便利な時もあるので、自分の好きな部位だけでも覚えておくとよいでしょう。

赤身肉の品種による違いを解説

「ブランド肉ってよく聞くけど、どんな種類があるのかよく分からない」という人は少なくありません。

ここからは、赤身肉の品種について見ていきましょう。

ブランド牛と何が違うの?知っておきたい和牛赤身肉の4品種

「和牛」について意外と知られていないのが、「和牛」の定義です。「和牛」と定義できる牛は全部で4種類となります。

1.黒毛和種

全国で飼育されている品種で、和牛の90%以上が黒毛和種となります。

松坂牛、近江牛、神戸牛といった有名ブランドで馴染み深いですが、産地ごとに厳格に決められた規定があり、有名ブランド以外にも、数多くのブランドがあることはあまり知られていません。

2.褐毛和種

赤毛和牛(あか牛)とも呼ばれている褐色の体毛をした品種の牛です。

黒毛和種に続く飼育量とは言え、年間の出荷は2万頭から3万頭となります。

主に熊本、北海道、高知で飼育されています。

3.短角和種

主に東北で飼育されている品種で、岩手県のいわいずみ牛が有名です。出荷頭数としては全国で1万頭程度となりますが、放牧や自然交配など、雄大な自然環境を生かした飼育が行われている地域もあります。

4.無角和種

山口県で飼育されていますが、年間出荷頭数は200頭程度で、ほとんど出回っていない品種となります。

和牛とは、日本在来の肉専用種として指定された、上記の4つの牛の品種ないしは4品種間の交雑牛のみを指します。

スーパーなどで見かける「国産牛」というのは、飼育された期間の中で、日本で飼育された時間が最も長い牛のことを言います。

和牛以外の交雑種でこの定義に当てはまるものは「国産牛」と表示されるのです。

他にも、ホルスタインやジャージーといった乳牛の肉も流通していますが、肉の美味しさ品質では、和牛>交雑種>乳牛、という順になります。

和牛赤身肉の特徴を徹底比較

全国に300種あるブランド牛の中でも、特に有名なのが、神戸牛、松坂牛、近江牛、米沢牛です。和牛赤身肉として、これらのブランド牛の特徴を比較していきます。

① 世界的に評価の高い「神戸牛」

「神戸牛」というブランド名を知らない人はいませんが、元々は「但馬牛」というブランド牛から厳しい基準をクリアした上質な牛が「神戸牛」として出荷されていることを知っている人はあまり多くありません。

海外でも最高級の肉として「KOBE BEEF」はブランドとなっています。

NBAのバスケット選手だった故コービー・ブライアント氏は父親が神戸牛好きだったために名づけられたという話や、オバマ元大統領が来日の際に神戸牛をリクエストしたという話は有名なところです。

神戸牛のサシ(霜降り)は脂肪融点が低く、口の中で溶けるため、柔らかく、ふんわりとした食感が味わえると言われています。

この神戸牛の美味しさは科学的にも証明されています。

数値が高いほど美味しいと考えられているOA(オレイン酸)やMUFA(モノ不飽和脂肪酸)の数値が高いからです。

②最高の肥育技術からなる「松阪牛」

松阪牛協議会で定められる「松阪牛の定義」の一つに、「松阪牛個体識別管理システムに登録されていること」というものがあります。

江戸時代に松阪地区に送られてきた「但馬牛」を活用するに過ぎなかった技術なのに、今では「肥育技術」が松阪牛を最高級のブランドにしている証となっているのです。

「松阪牛」は食べたらすぐに体温で溶け出すほど脂の融点が低く、柔らかい食感が特徴です。サシ(霜降り)は甘くてキメが細かく、上品な香り、滑らかな舌触りが味わえると言われています。

肉の美味しさを味わいながら、松阪地区の農家の人たちが、試行錯誤を重ねて確立させてきた「肥育技術」に思いを馳せるのも食の楽しみの一つではないでしょうか。

③ 琵琶湖の恵みが生む「近江牛」

近江牛が育てられる滋賀県は、日本一の「琵琶湖」があり、水が豊富で古くから米作りが盛んであるため、エサとなるワラも良質なものが流通しています。

自然豊かな滋賀県で育てられた「近江牛」は下記の4点が魅力と言われています。

  • 肉のきめが細かく、柔らか
  • 目減りと水引が少ない(輸送中に、牛の体重と水分蒸発による枝肉の量が減らない)
  • 美しいサシ(霜降り)が消えない(全体的に細かいサシがはいっている)
  • 独特の粘りを持つ脂肪 (脂肪にツヤがあり、適度に粘りがある)

④ イギリス人があまりの美味しさに驚いた「米沢牛」

山形県で育てられた牛を「米沢牛」と言います。

「但馬牛」が起源と言われている「松阪牛」「近江牛」に対して、「米沢牛」は、イギリス人がもたらしたと言われています。

上杉鷹山で有名な藩校「興譲館」に招かれた英語教師、チャールズ・ヘンリー・ダラス氏が、牛肉を食べて広まったのが「米沢牛」の始まりとされています。

冬になると雪が深く、夏は盆地で暑い日が多いのが山形県の気候の特徴です。

寒暖差の激しい環境で育てられた「米沢牛」は、西日本で育てられることの多い他の黒毛和種のブランド牛とは、一味違う霜降りのきめの細かさと良質な脂が特徴です。

赤身肉がヘルシーと言われる理由を解説

赤身肉はヘルシーな食材ですが、その理由は知られていません。詳しく見ていきましょう。

カロリー・脂質・たんぱく質、数値で見る赤身肉の特徴

赤身肉のカロリーは、同じ重さの脂身付きの肉と比べて約半分のカロリーであるため、食べても太りにくくヘルシーです。

例えば、牛肩ロースの赤身肉のカロリーは、100gあたり293kcalなのに対して、脂身付きだと100gあたり380kcalとなります。

https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

脂質に関しては、赤身肉は脂身付きの肉と比べて5分の1程度しかありません。

さらに赤身肉は、脂肪が少ないだけでなく、脂質を代謝するのに働くL-カルニチンという栄養分が多く含まれています。

また、赤身のたんぱく質は、脂付きの肉と比べると1.5倍から2倍多く含まれています。タンパク質は疲労回復や細胞修復を助けるため、トレーニングの後に赤身肉を接種すると筋肉が発達し、太りにくい体質となります。

ちなみに、赤身肉には、疲労回復の効果があるビタミンB群も含まれるため、美容にも有効な食材と言えます。

赤身肉のヘルシーな食べ方とは?

赤身肉は、カロリーと脂質が低く、高タンパク質でヘルシーな食材です。

部位による栄養分の違いを考慮して調理すれば、美味しくヘルシーな食事を楽しむことができるでしょう。

赤身肉をよりヘルシーに食べるのにおすすめなのは、薬味をプラスすることです。時間のかかる肉の消化を補うためには、消化酵素の働きを助ける薬味が有効になります。

  • わさび醤油でステーキ
  • 生姜が豊富なタレで焼肉
  • 大根おろしの入った和風ポン酢でしゃぶしゃぶ

ヘルシーな赤身肉に工夫を加えることで、さらにヘルシーな食事になるので、自身でも色々と試すとよいでしょう。

まとめ

赤身肉は、部位による特徴を理解して調理することで、より美味しくいただける食材です。

さらに、美味しいだけではなく、ダイエットやトレーニング後の食事にも適しています。

特徴を活かした調理方法でヘルシーに赤身肉を堪能しましょう。